今尾さんは、もっとアーティステックな要素
自分の名前が前に出てというような
売り方はしないんですか?


周りからはよく「欲が無いね」何てことは言われるけどね。
まあほんとはそういう欲が無いわけじゃないけど。
でも基本的な部分でそんなに変わるんかなっていう
気もするんだよね。
とにかく、「つくれたらいい」ていう気持ちが強くってね。
「朝起きて、叩いて、飯食って、寝る。」
要するに「生活」が出来たらそれでいいか
といった気もしてるんよね。



「工芸家として」とか、「手工芸を残す使命感」
といった意識はないんですか?


うん全然ないね。
それに格好をつけた言い方をすれば、
アーティストになりたいとか、工芸家になりたいとかよりも、
「今尾の生き方いいなあ」とか
「ひと」を先に見てもらえたら嬉しいと思うし。
実はさ、俺は「〜工芸展」とか「〜工芸協会」とか、
あのへんの世界が嫌いでね。
ああいう「先生方」のせいで庶民の工芸が
無くなったんだと思うよ。
確かに、展覧会とか行くとすごいんだけど、
見る人にはすべて別世界のものになっちゃってて、
本当は身近にあるいろんなものが、
同じように作られていたのに、
そんな部分はまったく伝わらないようにして、
結局、工芸というものを金持ちにしか買えない
「みるもの」にしちゃったんだよね。


確かに、その地域全体を盛り上げるというより、
個人名が前に出ることも少なくないですよね。


だから俺は田舎でわらじなんか編んでる
おっちゃんのほうが好きかな。


でも今尾さんって、かなり「メディア受け」
するんじゃないですか?


うん。実際テレビなんかにも出た。
でもそうやってメディアに載っても
連絡があるのはそれから4,5日ぐらいの
もんなんよ。
やっぱりメディアは次から次へと
上にどんどん乗っちゃうから、
忘れるのも速いんよね。